山菜歳時記
ア・ラ・カルト 〜その一

 

-山が笑う-
 雪が解けて、厳しい寒さもそろそろ忘れかけた頃、ミズナラの芽吹きなどで、山はにわかに銀色に輝きだします。土地の人はそれを、春の訪れを祝うように、「山が笑う」といいます。
 そして4月もなかばを過ぎると、山の景色は日々変化して、イタヤカエデの赤、タムシバの白い花、山桜のピンク、濃い黄緑色のブナの芽吹きと、まるで山が、フルーツパフェのように豪華にみえる一瞬です。▼

 山の状態はその年々で違います。雪解けの早さ、気温やその変化、雨の量、それらによって山菜が採れる時期も微妙に変わってきます。土地の人は長年の知恵で「あそこの山の、あのブナの木が芽吹いたらぜんまいを採りに行きましょ。」といった自然の動きで、山菜の採れる時期を判断しています。

たらの芽(4月中旬)
 たらの芽はいわずとしれた山菜の代表格。人の背の高さほどもある「タラノキ」という木の新芽で、ひょろっと伸びた木の先端に付いています。芽のつけね付近には、堅いとげがあるので、注意が必要。
 木を見つけられれば採取は簡単ですが、採る時期が限定されます。また、芽の数は、一本の木に対しあまり多くないので、採りすぎると弱ってしまいます。



こごみ(4月中旬まで)
 「こごみ」は別名で、正しくは「クサソテツ」ですが、「こうめ」「こごめ」など、人によっていろいろに呼ばれます。
 似たような形のものに「ぜんまい」や「わらび」などありますが、クサソテツはオシダ科、ぜんまいはゼンマイ科、わらびはワラビ科とそれぞれ違う仲間で、生える場所も異なります。
 特徴は地下茎で増えるため、群生していて、道ばたや少し湿り気味の平らな所に多く見られます。5月頃、大きくなったこごみを見つけ、翌年採りにいきましょう。(▲写真右)ただし、こごみも芽を残さずに採ってしまうと、弱ったり、枯れてしまったりします。そこんとこよろしく。

 ぜんまいやわらびとの大きな違いは、あく抜きがいらないことで、採ったすぐゆでて食べられます。少しぬるっとした食感は、生を天ぷら、ゆでて、おひたし、ごま和え、醤油マヨネーズ、なんにでも利用できておすすめです。市販の水煮とは全く違う味わいが楽しめます。(写真「こごみの鬼くるみ和え」

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